歯列矯正は、ドクターとのコミュニケーションが治療結果に大きな影響を及ぼすことがあります。希望通りの結果を得るためには、担当ドクターとの適切なコミュニケーションが不可欠といって良いでしょう。コミュニケーション不足によるトラブルを避けるため、伝え方や言葉選びにも注意が必要です。
そこで本記事では、担当ドクターとの円滑なコミュニケーションを築くためのポイントを解説します。特に避けるべき表現や、誤解を招く言葉についてもご紹介しますので、これから矯正治療を受ける方の一助となれば幸いです。
なぜドクターとのコミュニケーションが重要なのか
そもそも歯科矯正治療において、なぜドクターとのコミュニケーションが重要なのでしょうか?
主に以下の理由があると考えられます。
希望に合った治療結果を実現できる
ドクターと十分にコミュニケーションをとることで治療のゴールが明確になり、患者さまの希望に合った治療結果を実現できるようになります。
患者さまが「どの歯をどのように改善したいのか、どんな仕上がりを望んでいるのか」といった希望をはっきり伝えることは、非常に重要です。治療のゴールが明確になって初めて、患者さまの状況に基づいた理想的な治療計画を立てることができます。それが結果として満足度の高い治療へとつながるのです。
患者さまとドクターの感覚に大きなズレがあり、そのまま治療が進んでしまえば、予期せぬトラブルを招きかねません。なぜなら、ドクターからすれば特に問題を感じないような症状でも、患者さまにとっては「どうしても治したい症状」というケースも十分に考えられるからです。
治療のストレスを軽減できる
治療中に生じる患者さまの感情をドクターに伝えることで、ストレスの少ない状態で治療を進められます。
特に初めて矯正治療を受ける方は、不安がつきものです。治療前の心配ごとや治療中の痛みや不快感などをそのままにしても、患者さまにとってプラスになるようなことはほとんどありません。
不安がある場合にはドクターとコミュニケーションをとることで、治療のアプローチ方法を改善してくれたり、器具の調整をしてくれたりと、患者さまのストレスを軽減するために創意工夫をしてくれることでしょう。
スムーズに治療を進められる
ドクターと直接コミュニケーションをとることは、お互いの信頼関係を築き、治療をスムーズに進めてくれる重要なポイントです。
患者さまとドクターの間で築かれる信頼関係は心理学用語で「ラポール」と呼ばれ、非常に大きな意味を持っています。このラポールは矯正治療だけでなく医療全般において欠かすことができません。
コミュニケーションを通じてドクターとのラポールがしっかり築かれると、患者さまの治療に対する理解が深まり、治療がスムーズに進むだけでなく、治療の精度も向上します。
治療のモチベーションを保てる
長期に渡ることが多い矯正治療において、ドクターとの定期的なコミュニケーションの場は、患者さまの治療に対するモチベーション低下を防ぐのに大いに役立ちます。
治療内容によりますが、一般的に矯正治療は6ヶ月から3年程度と長期間に及ぶことがほとんどです。その間、患者さまがモチベーションを維持することは決して簡単なことではありません。
だからこそ、ドクターが治療の進捗状況を患者さまに定期的に伝えるコミュニケーションは、治療の成功に欠かせないのです。治療中に行われるドクターとの対話を通じて、「治療が計画通りに進行しているのか」「今後のステップはどうなるのか」を都度しっかり把握できるため、その後のモチベーションに大きく反映されることでしょう。
治療の成功率が向上する
ドクターとの密なコミュニケーションは、患者さまの治療に対する積極性を生み、治療の成功率を上げることにつながります。
矯正治療は、患者さまとドクターの二人三脚であり、どれだけ経験や技術のあるドクターであったとしても、患者さまの協力なしに治療を成功に導くことは難しいものです。特に、患者さま自身がゴム掛けを行う「顎間ゴム」や、徹底した自己管理が必要になる「マウスピース矯正」においては、患者さまの協力が必須であり、ここでの協力度が治療の質や進行を大きく左右すると言っても過言ではありません。
ドクターとしっかりコミュニケーションをとることは、患者さまが治療の正しい知識を得るとともに、治療への積極的な参加につながります。ドクターによる指導のもと、患者さまが自分の役割をしっかり果たすことが、治療の成功率を上げる鍵と言って良いでしょう。
トラブルを最小限に防げる
ドクターと適切なコミュニケーションをとっていれば、治療中に問題が発生した場合でも早期に対応でき、トラブルを最小限に防ぐことができるでしょう。
患者さまは一人ひとり歯並びや噛み合わせはもちろん、性格も千差万別であるため、治療中に発生しうる問題も多岐にわたります。一方で、歯列矯正は患者さま個々の状態や特性に合わせて行われる治療であるため、ドクターはリスクや副作用の可能性を患者さまに合わせて幅広く考え、入念なシミュレーションのもと、事前に対応策を治療計画に反映させているのです。
ドクターとの深いコミュニケーションというのは、患者さまが自覚できる問題だけでなく、今後起きるかもしれない問題に対しても事前に対応できる、大きな安心材料と言えるでしょう。これは治療の遅延や合併症を最小限に抑えることにもつながっています。
すれ違いを生みやすいNGワードの例
「なんでもいい」
「なんでもいい」とお任せの状態で治療を受けると、自分の思い描いていた治療後のイメージとかけ離れてしまうことも少なくありません。
矯正治療は、各ドクターによって治療方針が異なります。例えば、歯の抜歯や顔のバランス、噛み合わせなど、重視しているものに差異があるのです。そのため、自分の主訴と希望をしっかりとドクターに伝え、丸投げ状態で治療を受けるのは絶対にやめましょう。
「見えるところだけを治したい」
「見えるところだけを治したい」とドクターに伝え、そのまま治療を進めてしまうと、前歯以外のバランスが崩れ、噛みにくくなってしまうことがあります。
歯列は、1本の歯が動いただけでも全体のバランスが崩れることがある、非常に繊細なものです。そのため、見える部分の前歯だけを治す部分矯正は、適応できる症例が限られています。
いくつかのクリニックでカウンセリングを受けたり、治療後のシミュレーションを確認したりして、治療のリスクを前もって把握するようにしましょう。
「とにかく急いでほしい」
治療中に「とにかく急いでほしい」と結論だけを伝えるのはおすすめしません。急ぐことを最優先にしてしまうと、治療のゴールが変わることで治療計画を急遽変更しなければいけなくなったり、早めに治療を切り上げることで治療のクオリティが損なわれてしまったりするため、できるだけ控えたほうが良いでしょう。
矯正治療は、歯に微弱な力を継続的に加え、ゆっくりと歯を動かしていく治療です。無理に力を強くしてしまうと、歯の根っこが溶けたり、歯ぐきが大きく下がったりすることがあります。そのため、早急に歯を動かすのは患者さまの健康面を考えると不可能なのです。
治療開始前や治療中に伝えるべきポイント
自身の健康状態と医学的な情報
問診票でも記入するとは思いますが、治療前には必ず治療経験やアレルギー、現在の薬剤の使用などの情報を伝えるようにしてください。
例えば、矯正治療経験があったらどのような器具で、どのくらいの期間でやったのか、持病でどのような薬を飲んでいるのかなど、これらの情報は治療計画に影響を与える可能性があるため、正確に伝えましょう。
自身が感じている問題点
患者さま自身が、歯並びや噛み合わせの問題をどのように感じているかを細かく説明しましょう。また、治療後の歯の見た目や噛み合わせについての、具体的な目標を伝えることも大切です。
どの歯に問題があるか、見た目や噛み合わせにどのような悩みがあるか、どのような仕上がりを期待しているのかを詳細に伝えることで、ドクターはその問題を解決するための適切な治療計画を提案してくれるでしょう。
自分にとって何が第一優先なのか
まず、ご自身が何を第一に優先して治療したいのかを理解し、カウンセリングの段階でドクターに伝えましょう。歯並びや噛み合わせのここが気になる、という点に加え、以下のような絶対に譲れないポイントをあらかじめ見つけておくべきです。
- 抜歯(小臼歯)の有無
- Eラインや顔のバランス
- 治療期間の長さ
- 矯正装置の目立ちにくさ…等
何に不安を感じているのか
不安点や疑問点は正確に伝え、ご自身のネガティブな気持ちを解消することも重要です。
矯正治療中は、「本当にちゃんと治るのか?」「この歯の位置は大丈夫なのか?」「痛みが続いているのは問題ないのか?」など、さまざまな不安がつきものです。そこで不安をうやむやのままにしていると、予期せぬトラブルにつながったり、ドクターとの信頼関係にほころびが生じたりするなど、マイナスの結果を招く可能性があります。
ご自身の不安をドクターとしっかり共有することは、治療に関する理解が深まるだけでなく、スムーズな治療の進行にもつながります。また、何かトラブルが起こっていた場合にも、早期に適切な対策や調整することも可能です。
矯正治療における基本的な専門用語
矯正治療では、普段耳にしないような専門用語が多く存在します。以下は、歯列矯正に関連する基本的な専門用語とその解説です。あらかじめ矯正の用語や知識を把握することで、治療に関する理解が深まり、ドクターとのコミュニケーションを円滑にしますので、ぜひ参考になさってください。
ブラケット
表側矯正、裏側矯正、ハーフリンガル矯正において、歯の表面に固定される小さな装置です。ブラケットは矯正用ワイヤーを保持し、歯を移動させるために使用する重要な装置です。ブラケットが外れてしまうと、矯正力が歯に伝わらず歯が動きません。
歯の部位、治療方法によっても異なりますが、ブラケットは金属、セラミック、プラスチックなどで作られています。
矯正用ワイヤー
ブラケットとセットで使用されるのが、矯正用ワイヤーになります。
ブラケットに取り付けられ、歯を移動させる力を伝える役割を果たす重要な矯正装置の一部です。ワイヤーは定期的に調整、または交換されます。
マウスピース矯正
透明なプラスチック製のマウスピースを使用した矯正システムで、従来のブラケットとワイヤーを使用しません。取り外しが可能なため、食事や歯磨きが快適ではあるものの、向いている症例が限られます。
顎間ゴム(エラスティック)
顎間ゴムは、指の太さほどの小さなゴムであり、指定された位置にかけることで治療効率を高められる補助的な道具です。
噛み合わせを調整したり、歯の移動を助けたりするために、多くの症例では治療中に顎間ゴムが使用されます。顎間ゴムは患者さまが自身でかける必要があり、治療への協力度が高いほど効果を発揮します。
アンカースクリュー(ミニインプラント)
アンカースクリューは、歯ぐきに直接埋め込む小さな矯正用のネジです。主に、前歯を後ろに下げたり、ガミースマイルを改善したりする特定の症例で用いられます。
外科的矯正
歯の位置だけではなく、骨格の問題により重度の歯列不正が起きている場合、外科手術を併用して行うのが外科的矯正です。外科手術で骨の位置や大きさを修正し、ブラケットなどを用いて術前、または術後に矯正治療を行うことで、骨格性の出っ歯や受け口が大きく改善します。
リテーナー(保定装置)
リテーナーは、矯正治療が終了した後、歯並びと噛み合わせが安定するのを助けるために使用される装置です。固定式、または取り外し式のものがあります。
便宜抜歯
歯が並ぶスペースが不足していたり、前歯を後ろに下げたりする症例の場合、歯並びを整えるために行うのが便宜抜歯です。対象となる歯は、主に第一小臼歯、または第二小臼歯となります。
精密検査
矯正治療前に行われる、顔と口内の写真撮影、レントゲン撮影、歯型取りなどの検査です。この精密検査の情報をドクターが分析し、治療計画を作成します。精密検査は契約前に行うことが多いため、治療費とは別に3〜5万円ほど料金がかかることがほとんどです。
当院では、コンピューターで設計した精度の高いカスタムワイヤーを作成するため、治療中にも精密検査と同様の検査を実施しています。(治療中の検査時に料金は発生しません。)
まとめ「治療の成功はコミュニケーションにあり」
歯科矯正治療を効果的かつ円滑に進行するためには、患者さまと担当ドクターとのコミュニケーションがとても重要です。
治療前から治療中は不安になることも多くありますが、以下のポイントを押さえることで、ストレスが少なく、満足度の高い治療を受けられます。
- カウンセリングで自身の希望や主訴を明確に伝える
- 不安な点があったらクリニックへ相談する
- 治療前には優先順位を自分の中で決めておく
担当ドクターとのコミュニケーションをとり、正しく自分の情報や希望、気持ちを伝えて矯正治療を快適に進めていきましょう。
K Braces矯正歯科では、患者さまの不安を取り除き、効果的でスムーズな矯正治療を提供するため、ドクターとのコミュニケーションを密に行っております。 カウンセリングでは、カウンセラーではなく当院のドクターが直接お話を伺いますので、ご希望やお悩みを遠慮なくお話しください。