「ガミースマイル」は、歯茎が目立ちやすい笑顔のことを言い、特に病理的な問題はないものの、その見た目から大きな悩みになりやすい症状です。笑った時の歯茎が気になる、といった状態が続くと、社交性や自信の低下から、ガミースマイルが原因で心理的な問題にも繋がりかねません。
しかし、ガミースマイルを治したいと思ってはいるものの、上唇を切除する手術や骨を切って整形する手術などの比較的大きな外科処置は、なるべく避けたいと思っている方も多いのではないでしょうか? そこで今回は、当院でも行なっている比較的負担の少ない「歯肉切除」によるガミースマイルの改善について、実際の治療動画を交えながら解説していきたいと思います。
ガミースマイル主な要因とは
ガミースマイルは、笑った時に歯茎が見えすぎてしまう状態です。具体的には、笑顔を作った状態の上唇(リップライン)から、3mm以上歯茎が露出しているとガミースマイルの傾向があるとされ、その原因は下記のように多岐にわたります。
- 筋肉が発達して上唇が過度に上がってしまう
- 上唇の厚みが薄い
- 歯肉が肥大している、歯に被りすぎている
- 上顎骨が垂直方向に過成長している
- 上顎骨が前突して出っ歯になっている
- 歯並びのガタガタ(叢生)が目立つ
- 噛み合わせが深い(過蓋咬合)
上記のような要因が重なることで、笑ったときに歯茎の露出が目立ちやすくなり、ガミースマイルが生じるのです。
ただ、実際に治療する場合には、歯並びに問題がある場合には歯科矯正、上唇が過度に上がってしまう場合には上口唇切除術やボトックス注射など、原因によっても推奨される改善方法が異なるため、まずはその原因となるものを特定し、ご自身に適した治療方法を見つける必要があります。
歯茎の面積を減らす歯肉切除
ガミースマイルを改善する治療は、原因によってさまざまなものがあります。その中でも、比較的負担の少ない方法が今回紹介する「歯肉切除」です。
歯肉切除は、歯科用のレーザーを使用し、余分な歯肉を切除して形を整える処置です。つまり、歯肉を切除することで歯茎の露出面積を減らし、ガミースマイルを改善するという治療となります。
特に以下の方は、歯肉切除によるガミースマイル治療がおすすめです。
- ダウンタイムの期間を短くしたい
- 外科手術だと痛みや腫れが不安
- 歯に歯茎が多く被っていて、歯が小さく見える
- 矯正治療を終えたけど、少しガミースマイルが気になる
歯肉を切除しても問題はない?
ガミースマイルを改善するための歯肉切除では、本来は不要とされる余分な部分のみを切除するため、健康的な害はほとんどありません。
ただし、個人差があるものの、今まで歯茎が被っていた歯面が露出するため、切除した後に一時的ですが知覚過敏の症状が出る方もいらっしゃいます。
また、切除する範囲を見誤ると、知覚過敏が続いたり、左右のバランスが非対称になったりする恐れがあるため、治療前には十分な検査と診断が必要です。
歯肉切除治療の流れ
1. 検査と診断、シミュレーションなどを実施
歯肉切除をする前には、レーザーによる歯肉切除が適応か、どのくらい切除が可能なのかを事前に検査して確認いたします。当院では、一般的な歯周検査や写真撮影のほか、歯科用CTや口腔内スキャナーを用いた検査を行い、3Dデジタルシステムを活用した精密なシミュレーションと診断を行なっております。
※歯茎やその他の歯周組織の状態にもよりますが、切除可能範囲は約2〜3mm程度が平均です。
2. 麻酔をかける
歯茎を切除する前は、治療中に痛みを感じないよう麻酔をします。また、局所麻酔をする前には、歯茎に表面麻酔を塗布するため、注入時の痛みも心配ございません。
3. レーザーで歯肉を切除する
検査結果を考慮し、上の前歯の歯肉を切除していきます。レーザーは組織を切除するとともに止血が行われるため、出血はほとんどありません。ただ、使用中は焦げたような匂いが生じるので、煙とともにバキュームで吸引しながら処置を進めます。
当院では、原則として日本レーザー歯学会所属の院長が施術を担当いたします。
4. 歯の表面を磨く(研磨)
切除した歯茎の破片や、歯茎の下に隠れていた汚れなどを取り除くため、歯の表面を綺麗に磨いていきます。最後に患部を消毒し、歯肉切除自体は終了です。
この時点で歯茎のラインは切除によるガタツキが少しありますが、傷の治癒とともに綺麗なラインになりますので、ご心配には及びません。
5. 経過観察(約7〜10日後)
術後は一度経過観察に来ていただき、軽く消毒して患部をチェックします。歯茎は傷口の治癒が比較的早いため、この時点で綺麗な歯茎になっている方がほとんどです。
歯肉切除による実際の変化
以下は、当院で実際に行った歯肉切除の術前と術後の写真になります。治療範囲は、上の犬歯〜反対側の犬歯まで前歯合計6本です。
▼治療前と、治療して約1週間後のお写真です。被っていた歯茎が少なくなり、歯の長さが出ているのがお分かりになるでしょうか。
▼また、笑顔のお写真を見ると、施術による変化がよくわかります。治療前は、笑った時に上唇から歯茎の露出が多く見られますが、治療後は歯茎の面積が減りガミースマイルが目立ちにくくなりました。
切除する歯茎は約2〜3mmほどになりますが、歯茎の露出が少なくなることで、このように笑った時の口元の印象は大きく変わります。
▼治療内容の詳細
治療内容 | 歯肉切除(歯肉形成術) |
治療期間(回数) | 1回 |
治療費用 | ¥60,000 (1本あたり¥10,000) |
リスク・副作用 | 出血・疼痛・違和感・一過性の知覚過敏・歯肉の後戻り |
治療後の痛みはどの程度?
治療中は麻酔をしているため、焦げ臭さなどの不快感はありますが痛みは感じません。
麻酔が切れた後は個人差があるものの多少の痛みは生じます。しかし、痛みは少ないことが多く、強い痛みで日常生活に支障をきたすなどのトラブルが起こることはありません。もし痛みが気になる方は、処方された鎮痛剤を服用することで痛みを抑えることも可能です。痛みが心配な方でもご安心ください。
術後のケアについて
治療した当日は、切除した部分に歯ブラシが強く当たらないよう優しく歯を磨きます。翌日からは少し力を弱めながらマッサージ感覚でブラッシングを行い、プラーク(歯垢)が停滞しないように気をつけましょう。術後からしばらくは、鉛筆のような毛先をしたタフトブラシもおすすめです。
また、レーザーを使用した歯肉切除の場合、抜歯をした時のように、激しい運動やアルコールを過剰摂取することで出血が起こるリスクは限りなく低いですが、治療当日はなるべく激しい運動や長風呂、過度なアルコールの摂取は控えるようにしましょう。
レーザー治療による歯肉切除は、腫れや出血が少ないものの、術後はできる限り安静に過ごすことをおすすめいたします。ただ、日常生活に支障をきたすことはありませんので、術後は普段通り仕事や学校に行っていただいて問題はありません。
レーザーによる歯肉切除のメリット
術後の痛みや腫れが少ない
レーザーによる歯肉切除は、通常の刃をもったメスや治療用の回転バーを使用した治療よりも、痛みや腫れが少ないことが大きなメリットです。ガミースマイルを改善するその他の外科手術に比べ、患者さまの身体的な負担が少なく、治療による日常生活への影響も非常に低いと言えます。
ダウンタイムが早い
歯科用レーザーを使用した治療では、炎症や腫れが少ないことから、回復するまでのダウンタイムが非常に短いことが大きな特徴です。そのため、なるべく周囲にバレないようにガミースマイルを治したい、ダウンタイムで仕事や学校に影響が出るのは避けたい、といったケースでも安心して治療を受けられます。
歯肉切除の注意点
歯肉切除は、負担の少ない治療ではありますが、治療を受けるにあたり以下の注意点があります。
後戻りの可能性がある
歯茎は元々治癒力が高いため、個人差はあるものの、場合によっては歯茎が治癒に伴い数ヶ月で後戻りすることがあります。そのため、レーザーで歯肉を切除したとしても、確実に永久的な効果を得られるとは断言することができません。
適応に限りがある
最初にお話しした通り、ガミースマイルは個人によってその原因が異なります。歯肉切除は、たとえば歯肉多く、歯に被っている量が多いことが原因である方には非常に有効な治療法ですが、一方で骨格や筋肉が原因でガミースマイルが起こっている方には、不向きな治療となります。
また、切除できる量は健康的な歯茎であれば約2〜3mmであるため、重度のガミースマイルの場合、治療結果にご満足いただけない可能性も高いでしょう。
まとめ「軽度のガミースマイルならレーザー治療もおすすめ」
ガミースマイルは、基本的には健康上の害をなさない症状です。また、人によっては若々しく可愛らしい印象を与えることもあるでしょう。しかし、ガミースマイルがコンプレックスとなり、笑う時に手で口元を隠す癖がついてしまったという方も多く、最近ではマスクを外す機会が増えたことで、歯茎が気になり人前で笑いにくくなったと悩んでいるケースも頻繁に見られます。
このようにガミースマイルでお悩みの方のために、K Braces矯正歯科では、動画でご紹介した半導体レーザーを使用し、ガミースマイルを改善する治療を行っております。 レーザーを使用した歯肉切除のほか、歯並びが原因の場合には3Dデジタルシステムを活用した矯正治療を、筋肉が原因の場合にはボツリヌス治療といったように、ガミースマイルの原因に応じたオーダーメイドの治療方法をご提案しています。さまざまなアプローチを組み合わせながら患者様が自信を持って笑顔になれるような治療を提供しておりますので、歯並びだけでなく、ガミースマイルにお悩みの方は、一度お気軽に当院のカウンセリングにお越しください。
矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について
- 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間~1、2 週間で慣れることが多いです。
- 歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性があります。
- 装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重要であり、それらが治療結果や療期間に影響します。
- 治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まりますので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。
- 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
- ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
- ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
- 治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
- 治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
- 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
- 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。
- 矯正装置を誤飲する可能性があります。
- 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
- 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
- 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
- あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。
- 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
- 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。