唇に力を入れた時に、下顎に凹凸のシワが生じることはありませんか?これは梅干しのような形状から、「梅干しジワ」とも呼ばれるシワであり、筋肉の収縮による生理的な現象ですので特に心配する必要はありません。
しかし、ただ唇を閉じるだけで梅干しジワが生じる場合、それは歯並びや噛み合わせが原因かもしれません。
本記事では、歯並びと深く関係があるこの梅干しジワについて、矯正歯科の観点から詳しくお話ししていきます。「梅干しジワの原因」や「梅干しジワが起こりやすい4つの歯並び」のほか、「梅干しジワを改善するための治療方法」などをご紹介していますので、ぜひご参考にしてください。
梅干しジワとは
梅干しジワは、唇を閉じたとき下顎に現れる梅干しのようなシワのことです。全ての人に必ず存在するわけではなく、顎にある「オトガイ筋」と呼ばれる筋肉が緊張する場合にのみ、梅干しのような隆起が生じます。
梅干しジワの主な原因は、このオトガイ筋の緊張です。オトガイ筋は表情筋の一つで、下唇を引き上げるときに働きます。通常は、口をすぼめたりして力を入れなければ、シワは現れません。
しかし、何らかの原因で唇がうまく閉じられない状態になると、普通に口を閉じるだけでもオトガイ筋が緊張し、顎に梅干しジワが生じてしまいます。
梅干しジワの原因は歯並び?
梅干しジワの正体は、先ほどもお話しした通り緊張したオトガイ筋です。病気や外科手術の後遺症、ストレスなどによって痙攣したり、筋肉が緊張したりすることで梅干しジワが生じることもありますが、その割合はごく少数になります。
梅干しジワの主な原因は、歯並びや噛み合わせの問題、つまり不正咬合(ふせいこうごう)です。実際、歯並びに問題があると普通に唇を閉じるだけでは十分に閉鎖することができないため、力が過度に入ることで梅干しジワがよく見られます。また、歯並びだけではなく、下顎が後ろに下がっている骨格が原因で、唇が閉じにくくなることも多くあります。
このように、唇が閉じにくい、または完全に閉じることができない「口唇閉鎖不全(こうしんへいさふぜん)」という症状が、梅干しジワを引き起こしているのです。口がぽかんと開いてしまう状態から「ポカン口」とも呼ばれ、口呼吸を促す要因としても懸念されています。
梅干しジワが起こりやすい4つの歯並び
では、一体どのような歯並びが口唇閉鎖不全を起こし、そして梅干しジワになりやすいのでしょうか?
出っ歯(上顎前突)
上の前歯が突出している出っ歯は、特にオトガイ筋肉の緊張が起きやすいとされる不正咬合です。正常な歯並びに比べ、下唇をより上に引き上げなければ唇を閉じることができないため、オトガイ筋に過度な力が入って緊張を起こし、梅干しジワが現れます。
受け口(下顎前突)
下の歯が前に出ている受け口も、上下の唇が閉じにくく、梅干しジワを引き起こしやすい歯並びです。唇を閉じようとすると、前に突き出た下の歯が邪魔になってしまい、唇を正常に閉じることができません。
口ゴボ(上下顎前突)
口ゴボは、上下の歯が前に出ている状態を指します。横から見ると、口元が上下とも前方に突出し、Eラインに大きな影響を及ぼしているのが特徴です。
口ゴボは上下の歯が前突している分、唇を閉じる際に強く力を入れる必要があります。このことから、上下の歯が前に出ている口ゴボの場合も、口唇閉鎖不全による梅干しジワが起こりやすいとされています。
開咬(オープンバイト)
開咬はオープンバイトとも呼ばれ、奥歯で噛んだときに上下の前歯が噛み合わず、隙間が空いてしまう不正咬合です。
上下の前歯が前方に傾斜している傾向が強いため、正常に唇を閉じることが困難で、無理に唇を閉じることで下顎に梅干しジワが生じます。
梅干しジワの悪影響
審美性の低下
安静時のみならず、口を結んで笑顔を作る際にも現れる梅干しジワは、見た目に大きな影響を与える症状です。日常生活はもちろん、大切なイベントでの写真撮影など、さまざまな場面で気になってしまう因子となります。
このような過程から梅干しジワがコンプレックスになり、自信を持って過ごすのが難しくなることで、見た目だけでなく心理的にも悪影響を及ぼす可能性があります。
口呼吸の誘発
歯並びによって梅干しジワが生じている方は、唇を閉じる際に意識的に力を入れなければならないため、睡眠中やリラックスした状態では、無意識に口が開いて口呼吸を起こしやすくなります。
口呼吸による口内の乾燥は不快感だけでなく、細菌が繁殖しやすいことから、口臭や虫歯・歯周病などのリスクが高まり、重大な歯科疾患の発生にも繋がりかねません。
口周辺の緊張感や疲労感
梅干しジワがある場合、唇を閉じるために周囲の筋肉が過度に緊張し、その結果疲労感が生じることも少なくありません。この緊張感や疲労感により、安静時にさらに唇が開きやすくなり、口呼吸や口内の乾燥を引き起こす可能性を高めてしまいます。
梅干しジワを改善するためには?
これまでにお話しした通り、梅干しジワの原因はほとんどが不正咬合によるものです。歯並びの影響でオトガイ筋が緊張するため、セルフケアやマッサージなど自力で簡単に改善することはできません。
歯並びによってオトガイ筋の緊張が起こっている場合、症状によってはワイヤーやマウスピースなどの矯正装置を使い、唇を無理なく閉じられるように歯を配列することで、矯正治療のみで梅干しジワを改善することが可能です。
ただし、骨格の位置や大きさが原因で顎のシワが生じている場合、矯正治療だけでは改善することが難しいため、顎の骨を切る外科手術が必要になることもあります。
骨格や歯並びによって、梅干しジワを改善する最適な治療法は異なりますので、まずは専門家へ相談して検査と診断を受けることが重要です。
梅干しジワを改善するための矯正治療
梅干しジワを改善するための矯正治療といっても、通常の矯正治療と特別変わりはありません。どのような歯並びが原因であっても、歯列不正や噛み合わせの問題を解消し、唇がスムーズに閉じられるように治療を進めていきます。
治療方法
1.表側矯正
表側矯正は、最もポピュラーな治療方法です。歯の表側に「ブラケット」と呼ばれる四角い装置を取り付け、そこにワイヤーを通すことで歯の移動をコントロールしていきます。
表側矯正の大きな利点は、どんな歯並びにも対応できることです。また、歯の移動を正確にコントロールできるため、治療の進捗を予測しやすいという特徴もあります。
一方で欠点としては、ブラケットとワイヤーが歯の表面にあることから、比較的目立ちやすいという点が挙げられます。近年では、ブラケットやワイヤーのデザインが進化し、目立ちにくくする工夫がされていますが、周りに気づかれずに治療をしたいという方にはあまりおすすめできません。
2.裏側矯正
裏側矯正では歯の表側ではなく、歯の裏側にブラケットとワイヤーを装着します。この方法は、装置が歯の裏側にあるため、笑って歯を見せても周囲からは装置が目立ちにくく、他人に気づかれにくいのが最大のメリットです。
ただ、裏側矯正は独自の技術力が必要とされるため、熟練した知識と手技が求められます。また、専用のブラケットやワイヤー等が使用されるため、材料費や治療にかかる時間なども考慮され、他の治療法よりも治療費が高額になってしまいます。
3.ハーフリンガル
ハーフリンガルは、表側矯正と裏側矯正を組み合わせた治療法です。笑った時や日常生活で歯が見えやすい上顎を裏側矯正に、あまり見えない下顎を表側矯正で歯を動かしていきます。表側矯正と裏側矯正両方のメリットを活かせるため、目立ちにくいながらも、経済的な負担を軽減して治療を進めることが可能です。
4.マウスピース矯正
マウスピース矯正は治療法の中で唯一、取り外しが可能な矯正装置です。数日おきにマウスピースを交換することで、ゴールまで少しずつ歯を動かしていきます。
透明なマウスピースを使用することから、目立ちにくいのが大きな特徴ですが、装着する時間や交換日数を厳守する必要があるため、自己管理に自信がない方には不向きな治療法です。
また、歯並びによっては、マウスピース矯正だけでなくワイヤー矯正との併用が必要な場合もあります。
治療期間
梅干しジワが歯並びによって起きている方は、奥歯の噛み合わせにも問題があるケースがほとんどです。この場合、前歯の一部のみを矯正しても改善が難しいため、歯並びや噛み合わせの問題を根本的に改善する全体的な矯正治療が必要となります。
治療方法や不正咬合の程度により治療期間は異なりますが、奥歯を含めて治療するとなると、一般的には約2〜3年かかることが多いでしょう。
抜歯の有無
梅干しジワは、歯並びが口唇の閉鎖を妨げることによって引き起こされます。特に、前歯が前方に突出している出っ歯や受け口のような歯並びでは、口唇の閉鎖がうまくできません。
このような場合、歯を後ろに下げようとしてもスペースが不足していることが多いため、抜歯が必要になることがあります。抜歯によってスペースを確保することで、歯列と噛み合わせを正常に整えることが可能です。
ただし、抜歯の有無は個人の状況によっても異なるため、ご自身の治療で抜歯が必要かどうかを知るには、矯正医による検査や診断を受ける必要があります。抜歯をしない治療方法も選択肢として考えられることがありますので、矯正治療に精通したドクターに相談することが重要です。
美容整形では改善できない?
近年では、梅干しジワを改善するため美容整形治療が行われることがあります。しかし、施術内容によって効果は大きく異なるため、適切な手術方法を選択することが重要です。
オトガイ形成
矯正治療だけでは梅干しジワの改善が困難なケースでも、根本的にシワを改善することができるのが、顎先の骨(オトガイ)を切り、顎の形を整えるオトガイ形成術です。
オトガイ形成では、顎を前に出すこともできるため、特に下顎の後退により梅干しジワが生じている「下顎後退」の症状がある方には、最も適した治療法となります。 ただし、骨格によってはオトガイ形成に加え、上下顎の骨切り手術を併用した矯正治療が必要になることも多くあります。
ボトックス注射
ボトックス注射は、シワを改善するためによく用いられる治療法です。ボツリヌストキンが含まれた薬剤を筋肉に注入することで、緊張した筋肉が緩み、シワを目立たなくする効果があります。
梅干しジワを改善するために使用されることもありますが、下唇を持ち上げるオトガイ筋に力が入りにくくなることで、唇を閉じることが困難になる可能性が高くなります。また、持続期間は半年未満であることから、永続的に効果を期待することはできません。
ヒアルロン酸注射
ヒアルロン酸注射は、患部に注入することで部分的にボリュームを出すことができる治療法です。ボトックス注射と併用し、梅干しジワを目立たなくするといった処置も存在しますが、ボトックス注射と同じく一時的な効果であることに加え、顎にボリュームが出ることで唇がさらに閉じにくくなるリスクがあります。
まとめ「症状によっては矯正のみで梅干しジワを治せます」
ただ唇を閉じるだけで下顎にできる梅干しジワは、オトガイ筋の過度な緊張によるものです。この緊張は、出っ歯や受け口などの不正咬合により、唇がスムーズに閉じられないために起こります。
しかし、歯列矯正によって歯並びや噛み合わせを正し、唇を自然に閉じることができるようすることで梅干しジワを改善することが可能です。
K Braces矯正歯科でも、この梅干しジワを改善するための矯正治療を行っています。患者様が適切な治療を選択できるように、当院ではCTや3Dシミュレーションで精密に骨格を分析した上で、矯正治療だけではなく外科手術を取り入れた治療プランもご提案しています。
下顎の梅干しジワにお悩みの方は、まず当院の無料カウンセリングにてご自身のお悩みをお聞かせください。